特別企画 交流と実験
-新時代の〈やきもの〉をめざして-

2019年06月18日(火)~ 2019年09月06日(金)
  • 期間:
    2019年06月18日(火) - 2019年09月06日(金)
  • 場所:
    滋賀県立陶芸の森 陶芸館
  • 観覧料:
    一般500円(400円)/高大生380円(300円) 中学生以下無料*( )内は20人以上の団体料金
  • ギャラリートーク:
    7月14日(日) 8月11日(日) 各日とも13時30分から(1時間程度)

展示概要

 作陶に関わる人であれば、一度は訪れてみたい憧れの“聖地”信楽。滋賀県立陶芸の森では1992年の開設以来、国際文化交流の拠点として、53カ国1200人余りのアーティストが創作活動を繰り広げてきました。その取り組みは広く国内外で認知されるとともに、産地信楽の動向と関わりながら、新たな〈やきもの〉文化の創造に大きく寄与しています。

  陶芸の森ではこうした国際性豊かな実績を活かして、情報化とグローバル化の急速な進展に対応すべく、近年は海外のレジデンス機関との連携強化に努めています。とくに、国際的なネットワークを活用した、交換プログラムの導入は、時代を見据えた取り組みといえるでしょう。海外での制作経験と、交流の機会を求めるアーティストを支援しています。

  異国での<交流と実験>で、彼らは何に興味や関心をもち、どのような成果を得てきたのか。本展では、その取り組みを作品と彼らの言葉などを介して紹介。また、国内外の作家が信楽で制作した作品も交えつつ、現代の“やきもの”をめぐる多様な展望を模索します。

マティアス・リーマタイネン「イキペウラ」 2017(平成29年)年制作

マティアス・リーマタイネン(1989年生まれ)は、動物や人物をロボット風に仕立てた独自の造形表現で、今注目されているフィンランドの若手作家のひとり。彼の作陶に認められる特性は、日用製品から型取りしたパーツを組み合わせた手法にある。フィンランド語で<永遠の鹿>を意味する「イキペウラ」では、信楽滞在中に見付けたガラス製のカップ、またプリンの容器や空缶で、型取りしたパーツが用いられている。北欧のイメージに異国の製品を組み合わせた造形から、彼独特の視点や現代像を読み取ることができるだろう。

ヴィルマ・ヴィラバーデ(アルゼンチン)「チェロの女の子」2017/平成29年制作

ヴィルマ・ヴィラバーデ(1942年生まれ)は、ヨーロッパやアジアで国際展に出品するなど、世界各地で精力的に制作活動を展開している、アルゼンチンを代表する作家のひとり。彼女の作陶に認められる特性は、女性を主体とした自身のテーマに、滞在先での交流や体験で得たイメージを採り入れれた独自の人物表現にある。「チェロの女の子」は信楽の街中で見つけた古い男性用便器のフォルムを、チェロを弾く女性にアレンジしたもの。日本の懐古的な情景を読み解く彼女の視点が、顕著に示された象徴的な作品といえよう。

桑田卓郎(日本・岐阜)「無題」2016/平成28年制作

桑田卓郎(1981年生まれ)は伝統を大胆な発想で読み解き、梅皮華や石はぜを活かした斬新な造形表現を展開、今国内外で高い評価を得ている岐阜県在住の作家である。陶芸の森(信楽)では大物造りの伝統に触れ、大型造形作品の制作を試み続けた。「無題」はこの地で挑んだ大作のひとつ。棒状の巨大な2mの躯体に、厚く施されたプラチナ釉が妖しく輝くその姿は、周囲を圧するような存在感を放つ。磁土にセルベンを混入した陶芸の森独自の素地土が用られるなど、作家の感性と信楽の伝統が融合した成功例のひとつである。

小出ナオキ(日本・千葉)「Nursing Mamma」2011/平成23年制作

小出ナオキ(1968年生まれ)は身近な家族と自身の体験をテーマに、独自の造形を追究している作家。この「Nursing Mamma」は、絵画やFRP(強化樹脂)を素材に制作していた彼が、信楽で素材や技術と出会い、陶芸に主軸を移してゆく転機となった象徴的な作品である。彼の作陶に認められる特性は、外部の形を支持する内部の構造を活かした表現といえよう。子ども世話する母親の背面に開口部を設けて、内部には童話を連想させるイメージを展開させながら、出会いと別れまた成長など、現代の家族像を表現している。