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特別企画
「世界の形象土器」展

2018年06月24日(日)~ 2018年09月24日(月)
  • 期間:
    2018年06月24日(日) - 2018年09月24日(月)
  • 場所:
    滋賀県立陶芸の森 陶芸館
  • 入場料:
    一般:500円(400円) 高大生:380円(300円) 中学生以下無料 ※( )内は、20人以上の団体料金
  • 主催:
    滋賀県立陶芸の森、京都新聞
  • 後援:
    滋賀県教育委員会、甲賀市

展示概要

 世界の国々でつくられている土器は、自然の中の精霊や祖霊、あがめられている動物がうつわの模様や造形に表現され、その土地の素材である粘土や独特の手法によって制作されています。それらには、人々の暮らしの中の祈りや願いが込められており、これらの形象土器はそれぞれの国の特徴を示す芸術であるといえるでしょう。

 本展覧会では、当館が1990年の現地調査等を経て収集した、アジアはインド、インドネシア、オセアニアはパプアニューギニア、中南米はメキシコ、グアテマラ、ペルーなどの世界各地の形象土器の数々を展観します。

 

世界の形象土器展 出品作品分布マップ

 

本展の見どころ

「座った馬」インドネシア、中部ジャワ島、カソンガン 

カソンガンは、ジャワ島の代表的なやきものの村で、土器のモチーフはヒンドゥー神話に登場する神鳥のガルーダや動物です。カソンガンで形象土器をつくるようになった歴史は浅く、1970年代にサプト・フドヨ氏により考案されました。成形は紐状の粘土の輪を積み上げてつくられ、竹べらひとつで細かい装飾を施しています。「座った馬」は両耳を立て凛(りん)とした様子です。装飾はカールしたたてがみが特徴的です。馬や象、水牛などのモチーフは、バリ彫刻や影絵(ワヤン)、神話や伝説に登場する、インドネシアの人々にとって身近な動物であるようです。

 

「燻製づくりのための容器」パプアニューギニア、東セピック州、ディミリ村

 

ニューギニア島の東北部には広大な湿地帯があり、日本の川で最も長い信濃川の3倍余りの大河セピック川が蛇行しています。セピックの名は民族美術の宝庫として知られ、流域一帯には多種多様の彫刻、絵画などをつくる民族の集落があります。

ディミリ村はセピック川中流地方では主要な産地のひとつで、曲線の文様が特徴的です。この作品は、肉や魚を燻製するための容器でつるして使います。つるすための植物でつくられた持ち手がつき、胴部には指であけたような円形の穴がたくさんあります。正面と背面には顔がついています。成形方法は、紐状の粘土を巻き上げて形をつくっていきます。

 

「ごとく」パプアニューギニア、東セピック州、ディミリ村

ごとくは、ディミり村特有のやきものです。鍋を火にかけるために2点1組で使用されます。人面に台がついた形で、このごとくはハート形の仮面をつけています。このハート形の輪郭をもつごとくを、《ヤカルモ》とよんでおり、伝説の登場人物が表現されています。鍋をのせるため、頭から左右後方に太い二つの角のようなものがあります。使用する際には、このふたつのごとくが円をつくるように置き、この角のような部分が鍋を支えます。つくり方は粘土の塊のから形を引き出す方法で成形します。粘土の塊を使っているので、重量があり安定感があります。

 

「鉢」パプアニューギニア、サウォス地方、カマンガウイ村 

カマンガウイ村は、セピック川中流地方の村の一つで、もっとも近い沿岸の村から平原を2時間歩いていかなければならない土器村です。そのため、運搬に負担がかからない薄い土器がつくられています。この円錐形をした薄手の食事用尖底装飾鉢は精巧で美しく、カマンガウイ村の代表的な土器で、交易の商品としてつくられています。念入りに成形、施文がされていて、凹の部分に彩色されています。装飾は男性が行い、1点1点丁寧に文様を施し、同じ文様を量産しません。数多くの美しい文様が施せるか否かが男性の威信にかかわるといいます。土器の文様は動物の姿か顔、精霊の姿がモチーフになっています。成形方法は、紐づくりで、細い紐状の粘土を円錐形に巻き上げて形をつくっていきます。全体の形ができたら、コテで表面をなめらかにします。その後、へら先を使って彫刻刀のように裏面に施文をしていきます。

 

「象(ハティ)」インド、ビハール州、オランガバード

 インドの多くの村では、神が宿るとされる神聖な場所があります。それは大きな木の下や村の中につくられた小さな社であったりします。そこにはウマ、ゾウ、トラなどの像が村人たちの願いがある時に、供えられます。この象は装身具を身にまとっており、粘土を貼り付けた細かな装飾が施されています。また、朱色のなめらかな泥が全身に塗られているため、つややかな赤茶色が特徴的です。

 

「サゴヤシデンプン貯蔵用大壺」パプアニューギニア、東セピック州、アイボム村

 

アイボム村はセピック川中流の最も有名な土器村です。食料の乏しい雨季にも主食となるサゴヤシ澱粉を貯蔵する壺には精霊をモチーフとした造形が表現されています。大切な食糧を保存するため、人々は土器に祈りを込めます。この壺は装飾が簡略化されているもので、比較的、たくさんつくられている壺です。この壺のように口が広く、顔料で絵付けがされていないものは、サゴヤシの澱粉に水を入れ、発酵させて保管する壺です。この液状のサゴヤシ澱粉は、フライパンでこんがりとパンケーキのように焼いて食べます

 

関連企画

●レクチャー「インドネシアの野焼土器」川崎 千足氏 

日程:平成30年8月11日(土祝)14:00-15:30 会場:視聴覚室 

川崎氏が初めてインドネシアを訪れたのが、1988年。青春時代から憧れの地であったというインドネシア。日本の原点がこの東南アジアの文化に見られるのだと川崎氏は、熱く語る。弥生土器と同様な土器を作り、ご飯を炊いて生活をする人たちの存在を知り、インドネシアの土器村を訪ねたいと思い立ったのが、最初のきっかけだった。長年にわたり、インドネシアのやきものの村を歩いてきた陶芸家の川崎氏が、インドネシアの村々の野焼きや斜めロクロの技術など、その貴重な土器文化を紹介する。

※参加予約不要・入場無料


●ギャラリートーク

当館学芸員が、本展の展示解説をいたします。

日時:8月12日(日)、9月23日(日) ←都合により中止とさせていただきます。深くお詫び申し上げます。